生命(いのち)をかえりみず平和を訴える姿

 今年もうだるような暑さであった。 
 あの日、あの時・・・八月六日、九日、広島・長崎に人類史上世界で始めて
投下された原子爆弾。これによって二十万を超す多くの生命が一瞬にして奪
われ、また被爆者は原爆症に苦しみ、社会からは多くの差別を受けながらも、
「二度と私たちのような苦しみを繰り返させてはいけない」と、自らの生命と引
きかえに、今日まで訴え続けているのである。
 今年も八月五日、広島平和記念公園内の原爆死没者供養碑の前で行われ
た「いのちをえらびとる断食の集い」に参加した。宗教・宗派を超え、原爆に
よって亡くなった多くの犠牲者に対し追悼の思いを込めご供養し、同じ過ちを
繰り返さないという不戦の誓いをたて、祈りを捧げるのである。
 そうした中、一人の男性被爆者からお話を頂いた。高齢と体を蝕む原爆症と
戦いながらも、自らの生命をかえりみず、私たちに魂・生命の言葉で、「平和の
尊さ」を訴えておられた。

 昨今、「日本国憲法九条」改正論がとりざたされている。第九条には、「戦争
の放棄と戦力の不保持」が記され、世界的にもこの「憲法九条」は「平和憲法」
と賞賛されている。しかし、今わが国にはこの世界にも誇るべき「憲法九条」を
改正し、戦争という名の下で命を脅かす国に変えようとする一部の動きがある。
これは非常に残念なことである。
 「戦争は人権侵害の最たるもの」このことをふまえ、私たち日蓮宗宗徒は今
一度、この「平和憲法」と称せられる「日本国憲法九条」の重要性を学び、二度
と同じ道はたどらない、再び過ちを起こさないという誓いと行動こそが、今私たち
に社会が求めていることではなかろうか。私たち宗徒は、お釈迦様の精神・
法華経に学び、日蓮大聖人の教えに基づいて、檀信徒と共に「日本国憲法九条」
改正には反対の声を高く上げ、行動し、社会に対してまた世界に向けて「立正安国」
「立正平和」を訴えていかねばならないのである。


                 日蓮宗新聞 第1907号 (平成18年9月20日)より