被爆者からのメッセージ 
                        

 先日、私の住む石川県輪島市在住の被爆者の方とご縁を頂いた。その方は
今年八十六歳。地元で劇団の公演が開演されるということで、スタッフの方が
お寺に来られ協力要請があったのである。その公演の内容は、第二次世界
大戦、米国による広島への原爆投下。戦争や原爆による人々の苦しみ、特に
被爆者の苦しみを「日本の孫たちへ」という劇と、峠三吉氏の詩の朗読を地元
の小・中学生が出演し子どもたちへ、その親たちへ平和の尊さ、戦争の悲惨さ
を伝えることに主眼を置いたものであった。教育委員会・教職員・宗教者・PTA
会員に輪が広がり、その中心となっていたのが地元被爆者の方であり、その中
で実行委員長を務めたのが、今回のお話の八十六歳の方である。

 その方は、長い間当時の様子を口にすることはできなかった。ところが、その
想いを今回、「私たちは黙っていてはいけない。今、この時期だからこそ、戦争
の悲惨さ、原爆の恐ろしさ、そして苦しみを伝えていかねばならない」と自分自
身、長年しまい込んでいたことを、家族にさえ言えなかったことを語り始めた。そ
の日、実行委員会出席者の心中には、その熱意と勇気に平和への願い・想い
がさらに強くなり、実行へと移され、また地元の美術館にも、被爆者自ら描いた
当時の絵・十三枚が同時期に展示されたのである。

 今まで、口を開くことができなかったのは、そこに社会の偏見と差別があった
からである。口を開くことによって家族・子供や孫にまで影響が及ぶのでは?と
いう不安。我が身の体の心配と苦しみ。被爆者を苦しめている社会の偏見・差
別をなくすには、社会の一人一人が、被爆者の苦しみ、不安をいかに自分自身
の心の苦しみと感じることができるかであろうと思う。このことを忘れてはいけな
い。被爆者からの心からのメッセージ。あなたはどう受けとめることができますか?
 戦争のない、偏見・差別のない社会が、一日も早く訪れますように・・・。合掌

                             シリーズ28(H15.12.20号)より